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世界中がコロナパニックに覆い尽くされていた頃のある日、とても不思議なメッセージを受け取りました。それはアマゾンのシングー先住民保護区内にあるカヤビ族の集落、サマウマ村の首長からのものでした。いわく、我々には祖父母の時代ぐらいまでトライバルタトゥーの伝統がありましたが近代的なブラジル社会との接点が増えるにしたがって消えてしまいました。

しかし今、ブラジルの社会では現代タトゥー文化が盛り上がっており、街への出稼ぎに行った者たちからそういう話を聞くにつけ、かつての我々の風習の価値というものを感じるようになりました。私にタトゥーマシンの使い方を教えていただけませんか。地球のちょうど反対側の密林に暮らす裸族。それがどういった経緯で僕にメッセージを送ってきたのかを尋ねてみると、僕のヨーロッパ出張の常連客である在野のブラジル人研究者の名が出てきました。彼の悪戯っぽい笑顔が脳裏に浮かびます。なんと今、村ではアンテナ中継と太陽光発電によってスマホを手にしていて、皆んな僕のInstagramをフォローしているとのことでした。

公共交通機関の届かないアマゾンの奥地にその村はありました。先住民の生活を保護するために、ここには本来なら外国人はおろかブラジル人でさえも取得が難しい入境制限が設けられていますが、カヤビ族からの直接の招待ということでスムーズに入ることが出来ました。さっそく首長にマシンタトゥーイングの指導を始めたのですが、バナナの皮への練習が終わり、いざ人の皮膚に彫ってみようかという段階で、問題が起きました。当の首長を含めて彫られる人が村にいないのです。トライバルタトゥーの習俗が途切れてから数世代を経るうちにタトゥーの痛みに関する空想が増幅されていて、皆んな怖れをなしていたのです。

そんな折に近隣の集落から僕の噂を聞きつけた青年がやってきました。彼はシャーマンの修業中で、先祖の霊たちとの繋がりを強くするために、かつての伝統だったデザインを己に纏いたいと言います。それは口から耳にかけてのデザインで、ジャガーとかワニなどのなんらかの肉食動物の口を表しているように見えますが、それが具体的に何の動物なのかは本人たちも知りませんでした。施術はほんの10〜20分ほどで終わりました。ただの太めの線がいくつか集まっただけのシンプルなものなのです。周りに集まっていた村人たちがシャーマン青年に質問していました。やっぱりむちゃくちゃ痛かったか?いや、そんなでもなかったよ、全然耐えられる。次の瞬間、首長も含めた大勢の村人たちが我も我もと押し寄せてきました。皆んな本当は凄くタトゥーを入れたかったのでした。首長に手解きしながら一緒にどんどん村人に伝統的なトライバルタトゥーを彫りました。

サマウマ村からシングー全域にこの技術が広がることを願っています。

この時の詳細は僕のWEBマガジン連載記事や書籍で発表していますので興味があればチェックしてみてください。

アマゾン 作品一覧

引用
著書:「traibal tattoo designs from the americas 」出版:mundurucu publishers
著書:「traibal tattoo design」出版:the pepin press
著書: 吉岡郁夫「いれずみ(文身)の人類学」出版:雄山閣

参考文献
著書:「THE WORLD OF TATTOO」Maaten Hesselt van Dinter著 KIT PUBLISHER
著書:「世界民族モノ図鑑」明石書店
著書:「EXPEDITION NAGA」 著者:peter van ham&jamie saul 出版:antique collectors, club
著書:「MAU MOKO The World of Maori Tattoo」Ngahuia Te Awekotuku with Linda Waimarie Nicora
著書:「縄文人の入墨」高山純, 講談社
著書:「TATTOO an anthropology」MAKIKO KUWAHARA, BERG
著書:「GRAFISMO INDIGENA」LUX VIDAL, Studio Nobel

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